愛に出会った日(三好優実さん #1)

私はとても驚いた。意外だった。すこしだけ羨ましくもあった。私がびびってできなかったことを、この子はできてしまうんだと。そこから彼女は、私が進めなかった道をどんどん進んでいった。最初は止めようと思ったけど、やめた。彼女はずっと超えたかったのだと思ったから。

止めようと思い、やめたことで、彼女と自分の間にある境界線が何なのか分かった。それは、端的にいうと愛情だった。私は止めようと思ったとき「親が泣くよ」という言葉を使おうとしたけど、すぐにやめた。そんな言葉が彼女に届くとは思えなかったから。

だけど私は違った。そんな言葉を使おうと思ったくらい、親が、母が泣くのが嫌だった。そう自覚した瞬間はしっかりと覚えている。はじめて「愛」らしきものに触れたような気がしたからだ。

でもそれは、愛のおかげで一線を超えなかった、ではない。愛みたいなもののせいで、私は中途半端なままだという嫌悪に似た気持ちだった。

私にとってはじめましての愛は、想像していたよりもぜんぜんやさしくなく、温かくもなく、むしろ壁のような、力のようなものだった。煩わしかった。当時の私にはいらなかった。愛は、もっといいものじゃないのか。そう思ったことをはっきりと覚えている。

*

愛と私は、そういう出会い方をした。

正直、第一印象が良いとはいえない。ちゃんと記憶を遡れば、愛と読んでも良さそうな出来事はあるはずなのだけど。(たとえば、小学生の頃に飼っていたうさぎが死んだとき、泣いていた記憶がうっすらあることとか)

だけどそれから愛という存在は、すこしずつ色や形を変えながら、私を導いたり育てたり活力になったり笑わせりしてくれるものになった。ふつうごとでの連載を通して、私の中で起きた愛のうつり変わりを見つめていきたい。

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