愛に出会った日(三好優実さん #1)

はじめての彼氏は、想像していたよりもわくわくする存在ではなく、むしろすこしだけ憂鬱だった。みんなが楽しそうにする「彼氏」ってこんな存在なのか、とつまらなく思ったけれど、「彼氏ができた」というと友だちが楽しそうに色々と聞いてくれるので、その点だけ満足していた。

彼氏に会いたい気持ちは湧かなかった。断るのも気まずいからという理由だけで会った。「おまえのクールな顔が好きだから、笑わないで欲しい」と言われたのでそうしたけれど、そんなつまらないことはない。言われるたびに嫌いになった。はじめてしたキスが気持ち悪くて別れた。

その後も、何人かと付き合ってみた。それなりに会いたいと思えたり、相手からの連絡を心待ちにしたり、人並みに恋愛を楽しめるようにはなったものの、誰とも長くは続かなかった。だけどそんなものだと思った。そういえば私は、ドラマや漫画以外で愛というものをちゃんと見たことがなかったのだ。

相変わらず誰とも長続きしない恋愛を繰り返しながら、高校2年生になった。その頃になると、両親の仲は最悪だった。

毎日怒鳴り声が家中に響く。そんな環境なのに母は妊娠したりして、なんでこの人はいつも不幸になることばかり選ぶんだろうという気持ちになり、そんな母の幸せを願うのももう嫌になって高校を中退し、家を出た。家を出ると、俗にいうガラの悪い人と友だちになる機会が増えた。

新しい友だちは私にさまざまなことを教えた。といっても小心者の私がやったのは、煙草とか、お酒とか、夜遊びとか、それくらい。クスリ的なものにはまったく手を出さなかった。単純に怖かった。

だけど私と同じくらい小心者だと思っていた友人は、簡単に一線を超えた。

1 2 3