仕事をナメていた私が、仕事を愛せるようになるまで(BUBBLE-Bさん #1)

数年後、親会社への出向は解かれ、狭いフロアにすし詰めのように座らされた。

隣の上司がつけていた香水の臭いが苦痛で、1秒でも早く立ち去りたかった。「1秒でも早く消えて欲しい、トイレその後に」という小林製薬のCMがあったが、その上司の香水は、小林製薬の「サワデー」か何かかと思うほど強烈だった。

早く定時が来ないかと願う毎日。逃避のために、上司の目を盗んで携帯でネットサーフィンやSNS更新をしていたら、ある朝、部長に呼び出された。

「ネットを見ているそうじゃないか。なぜ仕事に集中しないんだ?」

「だって仕事がつまらないから」とは言えず、「すみません」と言うしかなかった。

件の香水上司からも怒られた。
ついに携帯を取り上げられ、発信履歴やブックマークなどを勝手に見られた。

もう、やめよう。ここにいるのは限界だ。

とはいえ私は、何がしたいんだ?
27歳にもなって自分探し、モラトリアムの嵐が吹き荒れた。

帰りの大江戸線に乗りながら読んだのは、岡本太郎の『自分の中に毒を持て』。「サラリーマンが嫌ならすぐにやめろ。今すぐ宇宙に向かってパワーを爆発させるんだ」と書いてあった。それを信じて退職届を出した。

そして、無職になった。
自分は何が好きなのか。何ができるのか。どういう仕事なら楽しく取り組めるのか。

潰れそうになりながら、「仕事」について初めて考えたのがこの時期だ。

心に決めたのは、「少しでも好きと思える仕事に就く」こと。
そう思って転職活動を行った。

それから数十人の小さな会社に入ったり、小さなスタートアップを起業したり、また大手に就職したりと紆余曲折を経た。楽しいこともあったけれど、苦労することの方が多かったように思う。

それでも仕事に対しては、一貫して「自分が好きかどうか」を考えるようになっていた。新人の頃とは違い、有意義に仕事に取り組めていたように思う。

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