手触り感のある町との出逢い(遠又香さん #3)

東川に来て最初に面白いと思ったことは、町の人たちの日常会話のテーマのひとつが、東川町であること。

東京に住んでいた頃は、東京の話はほとんどしない。私が友人たちと飲みながら語るテーマといえば、仕事かパートナーシップの話がほとんどだった。

集まる場所はアクセスのしやすい東京の中心地のどこか。
お互いの近況を共有していたらあっという間に時間がすぎる。

だけど、なぜか、この町に移住してからは、そこに「東川」というテーマが降臨してきた。

特にそれが顕著なのが町の酒場で飲んでいる時。町の酒場では、いろんな声が聞こえてくる。

「最近の東川は……」と最近の東川事情について話し始める人もいれば、
「昔の東川は……」とこれまでの東川について熱く語り始める人もいるし、
「東川の未来は……」と東川の未来についての願いを語り始める人もいる。

カウンターに座りながら、知らない町の人と一緒に東川について語っているなんてことも多々ある。

濃淡はあれど、自分にとっての東川愛を誰でも語れるのって、なんだか素敵なことである。

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東川町が町になったのは62年前。1959年から町制が施行された。日本の市区町村の中では、比較的新しい町といえる。

転機が訪れたのは、1999年。

全国で行われた平成大合併のタイミングで、東川町も隣接の旭川市との合併の話が持ち上がっていた。

当時の町長は合併賛成派。対抗馬としてでたのが、松岡市郎さんだ。結果的に、当選したのは松岡さん。今年の3月まで東川町長を務めた。合併ではなく、東川町という町を残すことを選んだ町民の民意を支持したわけだ。

その熱自体は、20年たったいまでも、伝播している。その証拠に、いまでも、いろんな人たちが、それぞれの視点から東川町について語ってるのだ。

もちろん、語るだけではない。いろんな形で、まちづくりにも貢献している。

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