シングルは苦手です(ふつうエッセイ #114)

シングルは苦手です。

と書けば、誰しも共通認識いただけると確信している。もちろん、トイレットペーパーの「シングル」のことです。

トイレットペーパーにこだわる人というのは、実は一定数います。僕なんかはアマチュアだと思うのだけど、やはり第一にシングルなのか、ダブルなのかは分かれるところだと思います。

エコ志向だったり、紙本来の肌触りを重視される方はシングルを好む傾向にあるように思います。「まずはエコから入って」という方も、徐々にシングルじゃないと身体に馴染まないという生理現象も発生するようです。

ダブルが好きな方は、やっぱり肌触りでしょう。シングルを二枚重ねたときと同じでしょ?という方もいますが、全然違うのです。どうやら重ねられている二枚の紙の間に空気が入っていて、それが絶妙なバランスなので良い感じになるという。本当か嘘かは分からないが、やはり、良いダブルのトイレットペーパーは滑らかで心地が良いものだ。

なのでシングルが苦手だ、と書いたけれど、たぶんダブルが好き過ぎるということなんだと思います。

社会学者のブルデューに言わされば、好きになるということは、そうでないものは、好きじゃないということになります。好きになるというのは、なかなか弊害もありますね。

ちなみにシングル派の人たちの中には、わざわざ二枚重ねられたトイレットペーパーをはがしてシングルにするという方もいるそうです。狂気とも言えますが、そうしたくなる気持ちは(ダブル派ではあるのですが)ちょっと分かります。

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ちなみにこんなエッセイを書いているのは、妻が間違えて、シングルのトイレットペーパーを買ってきてしまったから。

あからさまに絶望した顔をしたことで、妻を落ち込ませてしまいました。大人気なかったなあと、反省しています。