あたたかい。なんてあたたかいのだろう。
泣くはずではなかったのに、突然涙がこぼれた。じんわりと熱いそれは頬を伝って、ぽたりとぬいぐるみの頭に落ち、白い産毛に吸い込まれていった。
大丈夫。私はきっと、大丈夫だ。
たとえどんなことがあっても、このあたたかさを忘れなければ、そしてこれをくれた彼女が差し伸べてくれた手を離しさえしなければ、私は幸せになれる。
そういう確かな気持ちが、ぐるぐると洗濯機の中みたいに巡り巡って、みぞおちのあたりにすとん、と落ち着いた。いつの間にか、不安は消えていた。点けっぱなしのテレビで、生涯独身である人が現代でどれほど多くなったかについて話していた。
「少子化ですしね」
「家庭を持つことを望まない人はいますよね」
少しも深刻めいて話していない人達を、私はリモコンのボタンひとつで消し去った。部屋に静寂が訪れる。静けさが、私を少しずつ強くしていく気がした。
そうだ、私は女にしかない、女であるがゆえの苦しみをいくつも抱えている。でも今、私のそばにはひとつの愛がある。その愛は熊の形をしていて、まるで本当の生き物のようにあたたかく、私の痛みを癒してくれている。
*
どこかが痛む時は、それがどこかに関係なく、心も泣いているのよ。
──もう、泣かない。めそめそしない。
雨が降っても涙が溢れないように、あたたかいものを抱いて生きる。
*
私のことを思ってくれる人がいる。ひとりの人間として見てくれる人達が、そばにいる。
それだけで、明日からも生きていけるという太陽のような勇ましさに満ちていくのだった。
──