祖母の梅干し(ふつうエッセイ #12)

疲れたとき、風邪を引いたときに梅干しを食べる。

甘さと酸っぱさが同居するこの果実は、適度な塩味と相まって、身体をキュッと整えてくれる。

ご飯に梅干しをちょこんと乗せても良いし、たたいて梅肉にして納豆やサラダに混ぜるのも良い。酒のつまみに味わうこともできる。

食欲がないときも、梅干しを食べると、口の中がジュワッと弾け、いくらかご飯が食べられるようになる。

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最近は、市販の梅干しを購入することが多くなったが、小さい頃は祖母による手作りの梅干しを食べていた。若干塩分が多めに配合されていたので、両親は子どもの手近には置かないようにしていた。だけど、僕はその梅干しが大好きで、両親が隠していた梅干しをめざとく発見するのが常だったように思う。明らかに食べ過ぎだったが、健康を害さなくて幸運だった。

良くも悪くも、そのときの梅干しが僕の基準になっている。

紀州南高梅など、高級品としての梅干しをいただくこともあったが、戻るところは祖母の梅干しだ。既に梅干しを手作りすることはなくなってしまったが、あのときの梅干しが無性に食べたくなることがある。

8月は終わったが、まだ暑い日が時折、顔を覗かせる。疲労回復に、梅干しを食べてみてはいかがだろうか。