卵と白熊~あたたかな愛を信じ、女として生きていく(安藤エヌさん #4)

どこかが痛む時は、それがどこかに関係なく、心も泣いているのよ。

少女の頃、よくお腹を壊していた私に、母親がおまじないのように言っていた。本当にそうだと思う。雨が降る日、耳を澄ませているとしくしく心の声が聴こえてくる。

ため息をひとつつく。
また病院。これで何度目だろう。
年末から体調を崩して、病院に通い続けている。あの清潔で真っ白い空間を見ると、めまいがする。そしてこれは別に悪いことではないと思うのだけど、そこにいる人たちと不思議な連帯感が生まれる。

私もあなたも良くなりましょう。きっと、きっとよ。そんな風に胸の内で囁きながら、番号を呼ばれた私は診察室へ向かう。

*

 「卵巣が腫れてますね」

 すっきりと髪を後ろに束ねた女医が私にそう言った。らんそう、と私は反芻する。

 「つまりそれは、……手術が必要ってことでしょうか」

「いえ、そこまでではありません。ただお伝えいただいた不調は、卵巣が腫れていることから来ているかと」

 砂嵐みたいなエコー画面を指さしながら、彼女は訥々と言った。私は口をわずかに開け、そこから細く空気を吸った。

 「しばらく様子見でいいかとは思いますが、またつらくなってきましたら、こちらにいらしてください」

なるほど、と私は相槌を打った。すぐにどうこうするような状態ではないけれど、私は女性の大切な部分、──なんなら妊娠という、そういう女の一大事にもダイレクトに関わってくるもの──に欠陥が見つかったということだ。

すっくりと立ち上がって、私は診察室をあとにした。会計を済ませ、外に出る。空は曇天だった。喉が渇き、途中の自販機で緑茶を買う。キャップを開けお茶を嚥下すると、冷たい感覚が喉元から胃へと下りていくのが分かった。何口か飲み干したあと、ふう、とため息をつく。

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