【だいきらいで、だいきらいで、もしかしたらほんの少し好きかもしれない】ふるさと・東北(小波季世さん #4)

居場所を見つけたからこそ

連載1本目のエッセイで、わたしは、小説『冷静と情熱のあいだ』のテーマは「孤独」と「居場所探し」ではないかと記した。

「人の居場所なんてね、誰かの胸の中にしかないのよ」

江國香織『冷静と情熱のあいだ Rosso』

物語の中で、主人公・あおいを子どもの頃から見守ってきた老婦人・フェデリカが語りかけた言葉だ。

今、わたしのそばにいてくれる人たちも、わたしが東北出身だからそばにいてくれるわけではない。わたしも、わたし自身のことが昔より好きになれた。みっともなくあがいている自分もかっこつけている自分もどちらも。

今になってやっと、あんなにだいっきらいだった東北をほんの少しは好きになれたかもしれない。自分の居場所がちゃんと自分の中にあるからこそ、わたしはたぶん、「どこか別の場所」に行くのが前より怖くない。

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