【きっと両想い】文化人類学(小波季世さん #3)

ずっと世の中が不思議だった

人はどうして結婚するのだろう?

子どもの頃、そんな問いを何年も考えているような同年代は、少なくとも私の周りにいなかった。だいたいは「まあ、そんなもんでしょ」というくらいの認識だったように思う。

お姫さまが王子さまと出会い、いろいろありましたが結婚して子どもを産んで、しあわせに暮らしました。めでたしめでたし。

おとぎ話のゴールは大体が結婚で、その後の生活に関しては語られない。結婚してどんな風にしあわせだったんだろう?ケンカとかはしないのかな?結婚式ってどうしてやるんだろう?準備とかすごく大変そうだし、「お付き合い」で仕方なく参加してるような大人もいるのに……。子どもを産むのだってすごく大変そう……。そしてそれは「おめでたい」ことなの……?

こんな風にわたしの頭の中はギモンでいっぱいだった。

それ以外にも昔から「なぜ?どうして?」ばかり考える、我ながら理屈っぽい性格の子どもだった。笑

どうして学校に行くの?どうして算数なんかやらなきゃいけないの?なぜ花は咲くの?どうしてあの子はあんなこと言うの?どうして大人はお酒が飲めるの?なぜお祭りがあるの?どうして首都は東京なの?どうして働くの?

ずっと世の中が不思議だった。

わたしの出身学部では、2年生から研究室配属になる。20前後の専攻の中からどの研究室に行くかはずいぶん迷った。何しろ英文学や心理学、言語学、考古学、東洋史、美学・西洋美術史、日本語教育学など本当に分野が多彩なのだ。

ただ、そんな中で文化人類学はわたしに合っているように思えた。というのも、「結婚とは、婚姻とは何か?」「家族とは何か?」「お金とは何か?」「宗教とは何か?」と一番幅広く世の中の疑問を扱う学問だったから。

研究室訪問でも居心地の良さを感じたし、サークルの仲の良い先輩たちも文化人類学研究室出身だった。だが、希望の研究室に行けるかどうかは1年次の成績順で決まる。

倍率の高い研究室で、希望者全員が入れるわけではなかった。

必死に勉強を続け、念願叶って研究室配属が決まった時はうれしかった。しかしそこでわたしは自分の器の小ささを思い知る事件に出会うことになる。

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