【付かず離れずの親友】日本酒(小波季世さん #2)

人類史は酒と共にあり!?

大学でわたしが所属していたのは「文化人類学」研究室という。

「文化人類学?なんか聞いたことあるけど、どんな学問なんだっけ?」「そもそも初めて聞いた」という方も多いだろう。

かくいうわたしも大学に入学するまでその存在すら知らなかった。歴史学や英文学に比べたら、正体不明すぎる。しかしその実は、とてもシンプルだ。

読んで字のごとく「文化を通して人間を考える学問」。では、「文化」とは?「われわれのやることなすことすべて」。食べる、眠る、考える、信じる、もらう・与える・奪う、祝う・呪う…。

なんでもありなのが文化人類学だ(文化人類学については次回記事でたっぷり語りたいと思う)。

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ただ、もちろん研究の道。論文指導や研究発表会では、教授や先輩・同期・後輩たちから厳しい指摘も飛び交う。

「それは先行研究ですでに指摘されているように思いますが…?」
「フィールドで得られた知見には他にどんなものがあるか?」
「その論考は根拠に欠けるのではないでしょうか」

言うなればすベて「キミ、ちゃんと研究してるの?」というツッコミである。自分の甘さがわかっていても、なかなかに辛い。プライドなんか木っ端微塵だ。

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昼間はそれぞれの分野でフィールドワークを行い、深夜まで図書館や研究室で文献を読み込み、ああでもないこうでもないと議論を繰り返し…。

文化を愛する人間が集う研究室だから、伝統行事や飲み会にも人一倍本気だ。

春には花見もかねた新歓。夏には仙台名物・七夕祭りにかこつけた集まりや研究室の伝統行事・カレーパーティー。秋には東北の伝統行事・芋煮会。冬にはクリスマスパーティー、年越し、卒論提出や学位取得のお祝いやそれに続く予餞会。……とまあ、イベントごとをどこよりも大事にする研究室だった。

「おっ、幹事、買い出し行くの?そしたらあそこの酒屋のさ…」
「先生、ご指導ありがとうございました!今日は『伯楽星(宮城の地酒)』が飲みたいです!」

そんな他愛もないやりとりを何度しただろう。

飲み会の席で「実はフィールドでこんな悩みがあってさぁ…」と思いの丈を吐露したり、「そもそも『婚姻』って何!?『好き』って何!?」という高尚なのか何なのかわからない議論を始めたり…。(文化人類学者は「そもそも論」が大好きだ)

古来から言われている通り「飲みニケーション」が研究室の絆を深めていたのも確かだ。

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