深刻な少子高齢化が進む中、学習塾業界はレッドオーシャンと呼ばれて久しい。
2年前に東京都江戸川区で学習塾を開業した風間亮さんは、公立中学校の英語科教員の経験を持つ。「本当は中学校教員を続けるつもりだった」と話す風間さんが、なぜ学習塾を開業したのか。
前編では、教育業界を志すに至る風間さんの葛藤について話を聞いた。「理工学部に行けばつぶしがきくから」という理由で大学に入学した風間さん。勉強する意味を見出せなくなり、自分の選択に後悔する。そのときの違和感が、学習塾の原型を形作っている。
風間亮(かざま りょう) 東京都江戸川区出身。慶應義塾大学理工学部卒業後、NTTコミュニケーションズ株式会社を経て、福岡県田川郡の公立中学校で英語科教員を勤める。2019年5月、東京都江戸川区にて学習塾C.schoolを開業。「なりたい自分に出会える塾」というコンセプトを掲げ、生徒たちの進路選択を後押ししている。
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風間さんが開業した学習塾C.schoolは、JR総武本線の平井駅から徒歩5分の場所にある。
東京都江戸川区は、風間さんの生まれ故郷。学習塾のそばには、自身が通った小松川高校もある。
約3年前、株式会社マザーハウス代表取締役副社長の山崎大祐さんが主催する経営ゼミで、筆者は風間さんと知り合った。風間さんにとって、創業前夜のタイミングだ。
学習塾の構想を聞いたとき、ビジネスモデルや収益性よりも、風間さんの真っ直ぐな人柄に惹かれた。明朗に事業構想を語るのでなく、ひとつひとつの質問を考え、咀嚼しながら言葉を紡ぐ。ビジネスの善し悪しはともかく、風間亮という人間に信頼を寄せることができた。
その後、風間さんは計画通り学習塾を開業、2年間で多くの生徒たちに携わってきた。着実に実績を重ね、事業拡大に向けた構想を練っている。
筆者が驚いたのは、3年前に語っていたビジョンが全くブレていなかったことだ。
どうしたらそんな風に確信を持てるのだろう。風間さんを取材したら、多くの人が進路やキャリアを選択する上での「ヒント」を見出せるかもしれない。
風間さんに取材を申し入れると、Facebookで「まだ迷いまくってます!」と返信をもらった。確信を持ち続けているように見えるが、実際のところ迷いの連続だという。
その本心を窺うべく風間さんの学習塾を訪れた。