色んなものに生かされて(遠又香さん #4)

いま、私は旅先から、エッセイを書いている。

毎年、我が家はお互いの誕生日にテーマを決めて、旅をする。
ものではなく、旅をプレゼントする、それが我が家の恒例だ。
テーマ自体は、2人で話し合って決めることもあれば、相手のリクエストをそのまま受け入れることも。

今回は、気になっていたオーベルジュ(レストランがメインの宿)の予約がとれたので、その場所を起点に旅のテーマを組み立てることにした。

東川町に移住してから、生産者の方とつながる機会が増えた。
生産者の方をとても大切にしている料理人の方との出会いも増えた。
生産者と料理人がタッグを組めば、ご想像の通り、エネルギーに満ち溢れた一皿ができる。

今回は、尊敬している生産者の方がおすすめしてくれたオーベルジュを選んだ。
その場所から数時間離れたところに、その生産者さんが住む町があることもわかった。
東川町からはだいぶ距離が離れているけれど、彼の農地を訪れたことがなかったので、彼の町にも足を運ぶことにした。

旅のテーマは「食とつながりの旅」に決めた。

*

旅の初日、念願のオーベルジュのドアをワクワクした気持ちで開けた。

「こんにちは。予約の遠又です」
「お待ちしておりました。●●さん(生産者の方のお名前)のご友人の方ですよね?伝言を預かっていますよ」

緊張していた身体の力が、ふっと軽くなるのが、自分でも分かった。
初めての場所に行くのは誰だって緊張する。
だけれど、誰かの「愛のバトン」を受け取ると、その気持ちがぐっと和らぐことがある。

食事の時にお話させていただく中で、
私たちのことを丁寧に説明したお便りが何日か前に届いていたことを知った。
なんという愛のある計らい。おかげで、心からこの場にいることに集中できた。

料理自体も、感動の連続だった。

一皿一皿から、食材やその背景にある自然や生産者の方への愛情がひしひしと伝わってきた。
口に料理を運ぶたびに、新しい世界と出会い、エネルギーをたくさん受け取った。
料理人と生産者とのつながりだけでなく、食材のエネルギーの源にある、あらゆるものとのつながりを感じとれる気がした。
それはきっと、この料理に関わる全ての人が、あらゆるものとのつながりに感謝をしながら、その一皿を作っているからだと思う。

そんなことを思わせてくれるような体験だった。

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