続・高校生のカップル(ふつうエッセイ #670)

昨日、高校時代の恋愛(できなかったこと)について書いた。

でも思い出してみると、僕はおおきく、二人の女性に恋をしていたと思う。そのことは友人にも話していないが、昨日エッセイを更新した後に、「う〜ん、あれは恋だったんじゃないかな」と思い至った。

その二人の女性は友達同士だった。彼らとは中学校が一緒で、それぞれと同じクラスになったことがある。(3人一緒のクラスになったことはない……と思う)

彼らをAとBとしよう。

まず僕はAに恋をした。けっこう、ちゃんと恋をした。だけどAにはそのとき好きな人がいた。(ちなみにBにも好きな人がいた)

どうやら、その男に告白するつもりらしい。Aには全然合っていないタイプだと思った。Aから相談も受けたが、「やめた方がいいよ!」なんて熱弁した。そりゃ僕はAのことを好きだったので、その恋は成就しないでほしかったのだ。でも、二人は付き合うことになった。案の定、あっけなく別れることにもなったが、Aが別の男と付き合う可能性を考えたら、何だか無性に腹が立った。

そんなこんなしているうちに、僕は僕で、別の子を好きになったりして、Aとは友達の関係が続いていた。Aはそれほど成績が良いわけではなかったが、たぶんそれは勉強に熱心になれなかっただけで、実は頭が良かったと踏んでいる。清少納言の『枕草子』を暗唱する授業があって、Aは暗唱できた数少ないひとりになった。「まじで、Aが?」なんてクラスがざわざわしていたけれど、僕は驚かなかった。そうだろうなと思った。おこがましくも、僕が一番Aのことを理解していると思ったほどだった。

Bとは中学2年生からクラスが別だったので、そもそも話す機会は多くなかった。思春期であり、そもそも異性と話す機会は多くない。まして他のクラスの異性と話すには、何かしら理由のようなものが必要だと感じていた。

だけど、一度だけ近距離で話したことがある。あれは何のときだったか憶えていないけれど、なぜか教室で、僕はBと二人だけだった。何かに隠れようとしていたのか、Bの顔はものすごく近くだったのを憶えている。青春映画だったら、キスしているような場面だ。

でも、そのときも、それ以降も何もなかった。

そのまま僕は中学校を卒業した。AとBは同じ市内の高校に通い、僕は電車通学が必要な他市の高校い通った。だから会える機会はほとんどなかった。

でも、花火大会の日だったか。

たまたまAとBと遭遇した。彼らは二人で遊びに来ていた。僕も友達と一緒だったけれど、しばらくヤイヤイ遊び、なんやかんやあって、僕はAとBと三人で帰宅することになった。Bの家に寄り、他愛のない話をして、やがて僕は家へと戻った。(AはそのままBの家に残ったと思う)

それ以来、僕は、AとBと三人で一緒になれていない。どうやら二人は仲違いしてしまったらしい。それほど激烈に違いのことを悪く言ってはいなかったが、とにかく修復不能なくらい仲違いしてしまったことは分かった。そもそも二人に会う機会も少なかった僕は、仲を取り持つようなアクションを起こせなかった。

AとBには、それぞれ違う魅力があった。村上春樹の中編小説『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』のシロとクロのように。僕にとって中学時代は、大して楽しい思い出を持たなかった。だからこそ、AとBそれぞれの魅力は、僕の中学時代を温めてくれていたように思う。

そういえば、上述した村上春樹の小説の中でも、主人公・多崎つくるはシロとクロには恋していない。あくまで親しい友達として描かれていた。世の中には、恋に発展しない関係だってあるのだ。

冒頭に、「二人の女性に恋をしていたと思う」と書いたけれど、それは2023年に当時を振り返ったときに、「そうなんじゃないかな?」と思った僕の気持ちである。

でも、はっきりいって、2023年の僕と、2000年の僕は全くの他人といっていい。何もかもが違う。

描かれ方は恋だけど、当時の本心は恋ではなかった。そんな可能性もある。状況証拠は、実に頼りない。色々な思いが重なり、混ざり、こんなへんてこなエッセイになってしまったけれど、笑って読んでもらえたら嬉しい。