どんなにいびつでも、預かっている命(早坂あゆみさん #4)

一年ぐらい前、胸に迫るテレビ番組を見た。NHK教育で放映された「おうちへ帰ろう」である。障害を持つ赤ちゃんたちの養子縁組を行う、牧師夫婦を追ったドキュメンタリーだ。牧師夫婦は、さまざまな事情で親が育てられなくなった障害児たちの里親と家庭を探す。

子どもに障害があると知って、苦悩する親たちの言葉に心が痛くなる。「ふつうの子が欲しかった」「死んでくれたらいいのに」「自殺したい」。なかには一家心中まで考える親もいた。

50過ぎて結婚せず、子育ての苦労を知らない私が、このような親たちを決して責めることはできない。ふつうの子どもでさえ育てるのは大変なのに、障害があれば尚更だろう。私も彼らの立場になったら、同じことを思ったかもしれない。

でも、私には忘れられない話がある。20年近く前、故郷の札幌に住んでいた。このエッセイの3回目にも書いたが、当時精神障害者の方々と交流する会に属していたことから、ある精神科医を知った。村田忠良先生。今は亡くなられたけれど、地元では名医として知られ、その学識の深さと人柄に私淑していた。

先生は講演会で、ある母親の話をされた。若い初産婦で子どもに障害が2つ見つかったという。彼女の担当医はそのことを告知した後の、心のケアを先生に頼んだ。

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