The Music(ふつうエッセイ #602)

お笑い芸人のコンビ名のネーミングに首を捻ることが多い。

賞レースで散乱するコンビやトリオ、ピン芸人も含めたネーミングは「売れる気あるの?」と思ってしまう。ただ、既に認知度が高いお笑い芸人だって例外ではなかったりする。

サンドウィッチマン、U字工事、ゆったり感、もう中学生、とにかく明るい安村……。「売れれば正義」という説もあるし、そもそもネーミングの良し悪しと「売れるかどうか」は、それほど相関はないのだろう。

ちなみに、「かっこいい」と認知されやすいロックバンドのネーミングだって、実は、同じくらい首を捻るものが多い。アマチュアが集う音楽イベントには、ロックバンドなのかお笑い芸人なのか、判別つかないような名前が並ぶ。あれだけ心を鷲掴みにする音楽があるのに、バンド名は「なぜ、それにした?」と思うこともしばしばだ。

そんな中で、2000年代に活躍し、惜しまれながら2011年に開催したイギリス出身のロックバンド、The Musicだけは圧倒的だ。何せ、The Musicだ。そんなどストレートな名前を、どうしてつけようと思えるだろう。(お笑い芸人なら、「THE 漫才」なんて名前をつけるようなものだ)

僕は幸いにして、The Musicの日本国内におけるラストライブに遭遇した。彼らは親日家として知られ、たびたびフジロックに出演していたが、ラストライブの舞台もフジロックだったのだ。ヒットソングのオンパレード、フロントマンのロバート・ハーヴェイさんの歌声が苗場を揺らし続けた。僕の人生においても、3本の指に入るほどの圧巻のステージだった。

どストレートな名前は、抽象度が高くなり過ぎるという欠点も孕む。

しかし、それが「本物」であるならば、そのアウトプットは長く語り継がれるだろう。先日のとある飲み会で、フジロックに足繁く通っている方とライブ話で盛り上がった。「The Music!懐かしい!」となったのも、バンド名ゆえだろう。

ちなみに2002年にリリースされた、彼らのデビューアルバムの名前は「The Music」。誰か止めなかったのか。いや、こいつらは本物だと、マネジメントに関わる人たちは確信していたのだろう。

20年前のアルバムだが、今も新鮮に聴くことができる。ノスタルジーゆえの感覚だとは、思いたくないし、実際思えないのである。