1通目「ただ、待つよ。」(山本夕紀さん #1)

#1通目「ただ、待つよ。」 

言葉を待つ。という愛し方を、私はしている気がする。

仕事でもプライベートでも、私はおそらく人と会話をすることが多い。そして会話の中では、割と好んで聞き役になる。仕事では店舗での接客中やポッドキャストの収録中、プライベートではお散歩しながらおしゃべりしたり、のんびりお茶やお酒を飲んだりしているとき。
そんな様々な会話の中で、時に話し手はスラスラとは言葉が出てこないことがあったり、自分が思ったことよりも、一般論や言い易いことばかりを話しているように見えることがあったりする。

そんなとき私は、ただ、静かに待つ。あなたの話を聴いているよ。という姿勢で。

(もちろん相手の話を引き出したくて、私から質問をするということもよくあるのだが、その場合と「言葉を待つ」という場合では、同じ聞くという行為でもスタンスや話し手から語られる内容が異なる気がしている)

そうすると、短い沈黙を経た後、話し手は自分の思っていることを自分の言葉で語り出してくれることがある。
さっきまで当たり障りのない話をしていた人が「あ、それで私は〜」と、自分の思ったことを話してくれたり、言葉がスラスラ出てこない人も、ポツリポツリとでも話を続けてくれたりする。

その姿は無防備で、同時にとても勇敢なように私の目には映る。
赤の他人である私に、その人の一部というか、その人そのものを見せてくれているような。

そしてもうこうなったら私は、見せて頂いている姿を一心に見つめ、できる限り受け止めようとする。
思えばこの一連の流れは、私が何かを愛そうとして行っていることなのかもしれない。

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