死んだあいつと、生きてる俺と(BUBBLE-Bさん #4)

しかしその後、お互いの関係は少しずつ捻れていった。

社員紹介の場合、紹介した人は寸志が頂けるという社内規定があったのだが、それを知ったあいつは、「お金のために俺を推薦したんだろう?」と怒り始めた。

他の社員にも、私のことを「金のために俺をここに入れたんだ」と言いまわり、いかにも金に汚いやつ、友情を金で売るやつのように吹聴していった。

いつの間にか、どんどん険悪な関係になってしまった。雑談することも減り、寂しく感じることが増えた。会社に行くのも嫌になっていた。

「こういうモメごとって楽しいじゃん」

あいつはタバコを吸いながらヘラヘラ笑った。

私は本当に後悔した。一緒に働いたら楽しそうだから、スキルだって持っているから、そして無職で困っていたから推薦したのに。
友達を同僚にすべきではないと、この時ほど強く思ったことはない。

ある時あいつは、頭痛がひどいと言って会社を休んだ。
手術が必要と言われて大手術を経て、大丈夫になったからと復帰してきたが、関係性に変化はなかった。

そして時代はiPhoneが日本に上陸する前夜。
私は仲間に誘われ、スマホのアプリを作る会社を起業するために、その会社を離れた。

「iPhoneなんか売れるわけねえよ。女子高生がこんなの使いこなせるわけねえよ」

会社での最終日に、あいつに言われた言葉を今でも覚えている。
その後は数回のDJパーティを一緒にやったくらいで、会うこともめっきり減った。

数年後のある日。前の会社の人事部から「彼が会社に来なくなったけどどうしているか、知ってる?」という電話がかかってきた。私も青天の霹靂で、知らなかった。
本人に電話をして聞いたところ、会社への不平不満のあと、体調が悪い日があるんだ、別に行かなくてもいいんだ、ということを言っていた。何だか色々あったのだろう。

数週間後、あいつから珍しく電話がかかってきた。

「退職したよ。これからはフリーライターでやっていくから。あと、熱海のリゾートマンションを激安で買って熱海に住んでるから、遊びに来てよ!車も買ったから。ダイハツのミライースだよ。熱海は坂が多いからね」

背負っていた重荷が降りたかのようなハイテンションの電話に、何だか知らないけど、とにかく「良かったなあ」という気持ちになった。何より、西新宿で遊んでたあの頃の関係に戻れそうな気がしたことが、一番嬉しかった。

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