ろくでもない父からもらった、たったひとつの宝物(李生美さん #4)

愛について語るのも、わたしの番はいよいよ最終回。
カニバリズムやら神さまやらうんちから愛を見出してきたが、最後は家族の話をしよう。

17歳の時に亡くなった父が遺してくれた、わたしの宝物について。

ろくでもない父親だった。

酒癖が悪くて、気に入らないことがあるとすぐに怒声を浴びせて、怒りでその場を思い通りにしようとした。
赤ちゃんが泣いて要求を訴えるように、父は怒りで訴えていた。わたしには3人弟がいたが、父が一番子供だった。
家に爆弾を抱えているようなもので、わたしは父の機嫌をいつも気にしていた。わたしにとってリビングは、居心地が悪い場所だった。まともな父親を持つ友人が羨ましかった。

親としては、どうしようもない父だった。
だけど唯一、わたしが死ぬまで人生を共にすることができる、かけがえのないものを授けてくれた。

それが名前である。

「生美」(韓国読み:せんみ)と書くわたしの名前には、「生きることは美しい」という意味が込められている。
よく「美しく生きるっていう意味?」と聞かれるが、わたし個人の生き様というよりも、生命への賛美が込められているこの名前が、とっても気に入っている。

なぜ、父がわたしにこの名前をつけたのか。それはわたしの誕生時に理由があった。

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