営業日(ふつうエッセイ #327)

社会人とそうでない人間を分かつものは、営業日という概念だ。

そう言い切ってしまえるほど、営業日を巡るあれこれに頭を使ってきた。

営業日とは「休みを除く稼働日」のこと。だいたいのビジネスパーソンにとっては月曜日〜金曜日の平日を指す。世の中のすべてのシステムは、営業日をベースに組まれているといっても過言ではない。

そりゃそうだろう。誰だって、休日には休みたい。

新社会人になって数年は、ときどき休日出勤したこともあった。けれど、基本的には周囲と足並みを揃えて仕事をせざるを得なかった。ひとりでできる仕事などたかが知れているからだ。ほとんどの仕事は同僚、取引先、顧客との共同作業なわけで、関係者全員が稼働している営業日をもとにスケジューリングしなければならない。

会社を創業し、休日も何かしら手を動かすようになったいまでも、やはり取引先が稼働していない(=営業日でない)休日のことは念頭にある。「月〜金はこれをやって、取引先が休んでいる土日でこれをやろう」みたいな感じだ。

業績の良い企業の傾向として、「共通言語」の存在が挙げられることがある。社員のコミュニケーションの巧拙は、どうしても人に依存してしまう。システマティックに物事をみるのであれば、コミュニケーションが必要最低限でも仕事が回るような「仕組み」を作らなくてはならない。営業の強い会社が、とにかくタフな根性論ベースに社風形成しているのは、それなりに理屈が通っているというわけだ。(そんな会社には絶対に入りたくないけれど)

そういった中で、営業日というのは、すべてのビジネスパーソンにとっての共通言語になっている。共通言語と呼ぶのはいささか強引だけれど、営業日という概念がなければ、「明日までに資料を送ってください」の明日が休日になってしまうこともあるだろう。「休日に資料送付なんて常識外れだ、みんな営業日をベースにしているんだから」という理解があるというのは、やっぱり便利なのだ。

……ただ、個人的には、もう一度営業日という概念を壊しても良い時期ではないかと思っている。それは時間外労働などの負荷をかけたいという意図ではない。むしろフレキシブルに。育児や趣味などもバランス良く、自在に動けるような感覚で。Slackなどのチャットツールが非同期型とよばれているように、働き方だってもっと非同期になって良い。

そういう生き方を、もっと求めちゃって良いと思うのだ。