コーヒーを飲むタイミング(ふつうエッセイ #434)

スターバックスやタリーズコーヒーで仕事をするとき、例外なく、僕はホットコーヒーを注文する。ショートサイズ(S)にするかトールサイズ(M)にするかは気分に応じて変わるけれど、それ以外のドリンクを注文することはない。

もちろんコーヒーは好きだが、実は困っていることがある。コーヒーを飲むタイミングが分からないのだ。

たいてい僕は、カフェに入るとMacBookを開いて仕事か執筆をする。象印のマイボトルに入れてもらうのだが、しばらくは熱々の状態だ。保温効果が高く、1時間ほどの滞在では、全く口につけないということも少なくない。

熱さだけの問題ではない。少し冷めてからも、どのタイミングで飲めば良いか分からない。

飲むと決めれば、ずっと飲み続けてしまう。だがひとたびコーヒーに手が向かうと、それまで考えていたことが分断され、どうも集中に欠けてしまう。

頭はキーボードに向かい、身体はコーヒーに手を伸ばすなんて器用なことはできない。それゆえ、集中したいときはコーヒーを全く飲まずにMacBookに向かってしまうのだ。

逆にいうと、コーヒーをちびちびと飲んでいる状態のときは、集中できていない状態だ。コワーキングスペースでは特に顕著で、気付けば、喉を潤し続けているようなときがある。コーヒーは、集中するときに最適な「ツール」であるはずだが、僕にはどうも相性が悪い。

……ここまで書いて思ったけれど、いま書いたことは、僕が集中力を欠いているときのことをイメージしている。集中力が高まっているときのことを、僕はあまり想像できていない。

もしかしたら、集中力が高まっているとき(もちろん僕にだって、そういう状態のときはある)、僕はコーヒーのことなんてまるで意識していない。コーヒーを飲んでいるかもしれないし、全く飲んでいないかもしれない。先ほど「頭はキーボードに向かい、身体はコーヒーに手を伸ばすなんて器用なことはできない」なんて書いたけれど、無意識下では、そんな器用な真似をしているのではないか。思い出せないだけで。

のめり込んでいるときの、僕自身のこと。

何を考えているんだろう。ただただ空っぽで、空っぽだからこそ、何かを埋めるべく集中して作業しているんだろうな。そこにコーヒーが、あろうとなかろうと。