財布のアイコン(ふつうエッセイ #323)

ときどき、こんなアイコンを見掛ける。

あくまでイメージだが、企業のスライドなどでも「お金」の流れなどを説明する際に、財布のアイコンが使われることがある。

あくまで個人的な感覚だが、財布のアイコンは、このような「がま口」スタイル(以下「がま口」という)が多いように思う。よほど高齢のおじいさん、おばあさんでない限り、がま口財布を日常的に使う人はいないだろう。皆無といって良い。

それではなぜ、がま口財布がアイコンとして使われるかというと、それが分かりやすいからだ。

デフォルメされたアイコンは、情報量が少ない。長財布をアイコンに模すと、ただの長方形、もしくはスマホケースのように見えてしまう。

「まあ、みんな分かりやすいものが良いのだから、がま口財布のアイコンで良いではないか」と、目くじらを立てる僕のような人間を宥める声も聞こえてくる。

いやいやいや、でも、使ってないんだぜ。と僕は思う。

このがま口財布のアイコンを、いつまで使わせる気なのだろう。もしかしたら、生涯で一度も「生の」がま口財布を見たことがない人が、しれっとパワーポイントで、がま口財布のアイコンを使ってしまうこともあるんじゃないか。

経営者は経営者の、マーケッターはマーケッターの、ライターはライターの矜持がある。だったらデザイナーはデザイナーの矜持を見せるべきではないか。そして素晴らしいアイコンができた暁には、自らの意思で、がま口財布アイコンにさよならを言おうではないか。

たかがアイコン、されどアイコン。

使う姿勢に、あなたの生き様が現れているに違いないのである。