うんちが教えてくれた、自分を愛するということ(李生美さん #3)

とにかく便意を優先させること。この日から、それがわたしの一大ミッションになった。
本当にそれだけでうんちが出るようになるのか?と、最初は半信半疑だった。だけど藁にもすがる想いだったので、どんなに小さな便意の声でも地獄のノック練習のごとく拾っていった。
もちろん、空振りに終わることも多い。いままで自分の声なんて後回しにされてきた便意だ。いまさら言うことを聞いたって、なだめすかしたって、なかなか素直には応えてくれない。

でも、根気強くトイレに駆け込んでいくうちに、次第に努力が実るようになっていった。
トイレに入っている時間も短くなり、するするとうんちが出るように。

(奇跡……。うんちが出るの、最高すぎる……)

それからはだいたい昼の12時半くらいにうんちが出るルーティンを獲得し、夢にまで見た快便ライフを送ることになった。

己の快適は己の力で獲得せよ

うんちに悩まなくなって、わたしは気づいた。いままで便意の声を押し殺していたことに。
仕事に追われていると便意を無視し、人と一緒にいる時は気を遣ってなかったことにし、トイレが和式だったら踵を返していた。

自分の体が発するサインを無視し続けていると、体に異変をきたすのは当たり前のことだ。

「疲れている」というサインを無視すれば、体調を崩すことになる。
「悲しい」というサインをなかったことにすれば、嬉しいという気持ちもなくなっていく。

だから、自分の気持ちに素直になることは、自分を大切にすることへと繋がっているのかもしれない。

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