傷んだみかん(ふつうエッセイ #84)

買ったばかりのみかんが傷んでいると、切ない気持ちになる。諦めきれずに皮を剥くと、その箇所だけがぐしゃっと熟れてしまっている。食べる気になれず、そこだけゴミ箱に捨ててしまう。毎冬、何度となく繰り返される行為である。

傷んだみかんは、いつ傷み始めたのだろうか。

お店の人が、段ボールから取り出したタイミングでは傷んでいなかったに違いない。いや、彼らが認識できなかっただけで、傷みの兆候はあったのかもしれない。

人知れず、傷み出すみかんの心情はいかほどだったのだろうか。

みかんを愛する人間だからこそ、みかんの傷みにも寛容でありたい。他の果物と違って傷みやすい彼らの特性も理解しながら、今日も今日とてみかんを食べる。みかんを通して、人生の儚さを学ぶ。そんな日曜日も悪くない。