ところが、コロナウイルスの影響で、私は練習に全く参加できなくなってしまいました。仕事との兼ね合いで、いわゆる「密」な場所に、長い時間留まることを自粛せざるを得なかったからです。
コロナウイルスが流行って1年が過ぎた頃には、歌う場所がなくなってしまい困っていた私に、数名のバンドメンバーがスタジオに集まってくれ歌う機会をくれたことがあり、生演奏を体感し、彼らと歌えることはやはり大切なことだと改めて実感、心から感謝をしました。
*
昨年の夏、歌う機会を自分で創るため、バンドメンバーの1人にお願いして、Jazzのセッションバーというところに連れて行ってもらいました。
Jazzのセッションは、ドラム+ベース+ピアノかギターの最低3名のミュージシャンが集まって、スタンダードナンバーと言われる広く知られた曲の中から、誰かが演奏したい曲を指定して、譜面を元に即興で観客の前で演奏をします。
互いに「はじめまして」と挨拶をしたのち、曲と、その曲を演奏する曲調、テンポ、キーを確認後、演奏が始まります。セッションに慣れたミュージシャン達は、例え初対面で即興であっても素晴らしい演奏を繰り広げます。
私は普段ビッグバンドで17名のメンバーと週2回3か月間くらいしっかり練習した後に、人前でライブ演奏することをやってきたので、セッションという場はとても敷居が高い場所です。
私が初めてセッションバーに連れて行ってもらったその日、出会ったばかりのミュージシャン3名に「はじめまして」と挨拶をして、私が歌いたい曲、その曲を演奏する曲調、テンポ、キーを伝え、演奏が始まりました。歌い慣れていた曲ではあったものの、とても緊張し、何とか歌い終えました。(でも……緊張しながらも久しぶりに歌っている間は、とても楽しかった)
すると、セッションバーのマスターが声をかけてくれ、「来月から毎月来て」と、言ってくれました。
私の苗字以外を知らない人が、初めて歌を聞いただけで言ってくれた言葉。
名刺すら必要ない、自分が歌を歌うことで創ることができた機会、とても感激したその瞬間をよく覚えています。
*
それから月1回、8か月間セッションに通い続け、同時に高校生の時以来のボイストレーニングも再開し、歌う機会を増やしてきました。そして今年8月、初めて自身が主催する、少人数で演奏するライブを開催予定です。
私が心地良く自然体で楽しく歌い、同じように楽しむミュージシャンが演奏し、同じように聞いてくださる観客の方に楽しんでもらえる一体感を創る。
そんな心地良い巡りを生む歌を歌い届ける場を、愛情をもって準備をしていきたいと思います。
──