掃除は気付かないうちに(ふつうエッセイ #216)

目の前にゴミがある。

たいていの人は、それを手にとり捨てるだろう。だが、捨てた事実を知るのは自分だけだ。わざわざ「ここにあったゴミは僕が捨てたんですよ〜」なんて宣言する人はいない。

屋内外を問わず、掃除とは「気付かれない」ことが前提とした行為だ。

清掃している人を見掛けたときに初めて「ああ、この空間を掃除してくれているんだな」と認識するけれど、そうでもない限り、掃除の行為は目に触れない。

とても整頓された環境は、初めから「きれいな」状態だったと思われる。

誰かの家を訪ねたとき「ああ、綺麗なお宅だな」と感心するけれど、当然ながら客人の来訪に備えて、徹底的に掃除が行なわれていたのだ。(もちろんここで「うわあ、しっかり掃除されたんですね」と言うのはマナー違反だ)

想像力。

色々な場面で、そんな言葉が使われるようになってきた。まずは、自分の周囲で、誰かが心地良い空間をつくっていることを想像した方が良いのかもしれない。

そして、環境問題に憂う前に、まずは近所のごみを拾ってみる。そこから何かが始まる気がするのだ。