永遠に人を虜にするミステリアスさ
「日本酒はおいしくて楽しくておしゃれ」
そのことをお酒人生の最初から知ることができたのは僥倖だった。
日本酒を飲まない方はきっと、飲み放題のお店の安い日本酒などで嫌な思いをしてしまったか、日本酒の魅力を知る機会がこれまでなかっただけだろう。
わたしもウイスキーや焼酎、ビールについてはさっぱりだ。おいしいのかもしれないけれど、どこから始めていいのかわからない。
ただひとつ、日本酒と長く付き合ってみた身として言えることは、日本酒の世界は浅くも深くも楽しいということ。
(日本酒は全く同じお酒をキンキンに冷やしても熱々の燗酒にしてもそれぞれ楽しめる、世界的にも珍しい飲み物だ)
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ちょっとしたお米の違いや、食事の組み合わせでまったく違った顔を見せるお酒。日本全国にその土地の風土や作り手の気質を色濃く受け継いだ日本酒がある。
なんと麗しき魅惑の世界。日本酒そのものと同じくらい、わたしは日本酒の向こう側にある土地や人のストーリーに魅せられる。一滴一滴に込められた見知らぬ土地の、あるいは懐かしい街の物語。
たとえば、1852年(嘉永五年)創業の秋田・新政酒造さんの『No.6』シリーズ。お洒落なデザインで、普段あまり日本酒を飲まない人でも見かけたことはあるかもしれない。
日本酒造りにはお米と水と酵母が欠かせない。この酵母の中でも、国立醸造試験場が主に採取・認定した酵母を「きょうかい酵母」と呼ぶ。
「きょうかい6号=新政酵母」は、新政が発祥蔵となっている。数百年かけて守られてきた酵母なのだ。その酵母を全面に押し出したのが『No.6』シリーズ。
(より詳細をお知りになりたい方はこちらをどうぞ)
そんなストーリーを知ったとき、わたしはつい心酔してしまった。
普段クールに決めている人が、実はものすごい努力家だったことを知ったときのような、そんなときめき。(願わくばわたしもそうなりたい。)