一生忘れない、そのわけは
もちろん多少のトラブルはあったけれど、それ以上にいろいろな人に助けられた。
観光客でにぎわうヴェネツィアの水上バスでひとりぼーっとしていたわたしに、建物や歴史について詳しく説明してくれた船員さん。
(ちなみにこのお兄さんはにこにこしつつ、
「そうそう、ぼくはこの船着場で仕事をあがるんだ。これから友だちと飲みに行くから、
君も一緒にどう?え、無理?どうして?
そうか、でも来たくなったらいつでも連絡してね。ぼくの番号はXXX-XXXXだよ。
じゃあね。本当にいつでもいいからね!」
と軽やかにナンパして去っていった。やたら丁寧に説明してくれたのはヴェネツィアを楽しんでほしかったからなのか、ナンパが主目的だったのかは今でも定かではない)
「イタリアのリモンチェッロはこれが最高よ!あと、ここに来たからにはあの店の牛モツのパニーニを食べるのが一番ね!」と明るく教えてくれたフィレンツェ在住の日本人女性。
行く場所もやることも何ひとつ決めずにおりたったローマのホテルで、「このローマに来て目的がないなんて信じられないわ……」というあきれ返った目で私を見つつも、ロビーで休むことをOKしてくれたホテルのお姉さん。
この旅で出会ったすべての人とすべての出来事をわたしは生涯忘れることはないだろう。1番の目的地であるフィレンツェのドゥオモに登ったときのことも。