有線イヤホンとマスク(ふつうエッセイ #128)

ノイズキャンセリング機能のついた有線イヤホンを10年近く使っている。

昨年イヤホンジャックのついていないiPhoneを購入したため、併用しているワイヤレスイヤホンの使用頻度が高くなった。それでも音質や安定性などを重視したい場合に有線イヤホンを使っている。

最近僕が困っているのは、有線イヤホンとマスクの相性が極めて悪いことだ。

オフィスとして使っているコワーキングスペースは、コロナ禍のため、当然ながら全席マスク着用が義務付けられている。有線イヤホンを使用していると、マスクの紐が絡まり着脱が容易にできない。

イヤホンを外したらマスクに引っ掛かるので、同時にマスクも外す。逆もまた然り。ワイヤレスイヤホンを使用するよりも、ひと手間の時間とストレスがかかってしまうのだ。

ひと手間くらいなら、どうってことない。

ただ仕事していると、たびたびイヤホンやマスクを外したいシチュエーションが発生する。耳がちょっと疲れたり、飲み物が飲みたくなったり、トイレに行きたくなったり。

そうすると、ひと手間が何度も発生するわけで、結果的に手数が倍化されていくのだ。

どうにか有線イヤホンとマスクの和解を目指したいが、彼らが妥協する気配はない。

イヤホンは「僕がいなかったらそもそも仕事にならないだろう?」と主張する。マスクは「感染対策のためにマスクは必須だ。君こそ道を譲りたまえ」と反論する。終いには「持ち主のあなたが対策を講じるべきでは?」と至極もっとなことを言ってくる。危うく、それぞれを引きちぎってしまうところだった。

だが、上には上がいる。

眼鏡ユーザーの場合、3つの線が絡み、収拾がつかなくなるというのだ。

確かにそれは大変だ。周りを見渡すと、眼鏡ユーザーはそれなりに目にする。彼らは有線イヤホンを使わないときも、四六時中、眼鏡とマスクの喧嘩に対処しなくてはならないのだ。それは、大変恐ろしい。

でも、彼らが困っている様子をあまり見たことがない。

僕の観察不足もあるだろうが、もしかしたら、画期的な解決方法を発見しているのかもしれない。と思って少し調べてみたら、彼らはマスクのせいでメガネが曇ることを気にしていた。

なるほど。大変なことって、人それぞれなんですね。