えっという間(ふつうエッセイ #86)

わりと使い古された(だけど古びない)表現として「あっという間」というものがある。

考えてみれば面白い表現で「あっ」という短い歓声と、ちょっとした驚き。そのふたつが絶妙な塩梅でかけあわされたものだ。

短さを表すなら「えっという間」でも良いし「おっという間」でも良い。だけど「えっという間」だと批判性が高くなるし、「おっという間」だと驚き具合が足りない。

ちゃんと驚きの純度が保たれているからこそ「あっという間」という表現は成立する。第三者にもちゃんと驚いてほしいから、半ば当事者との共犯意識を匂わせる意味でも「あっという間」が成立する。ちょっと作為的な意図が見え隠れするような表現とも言える。

でも、考えてみれば、大してスピーディーでもないし、驚きがあるわけでもない(ことの方が多い)。

誠実であろうとするなら「おっという間」くらいがちょうど良いかもしれない。政治家が不正を働いて高速で謝罪を表明したならば(でも本質的な責任の取り方をしないのならば)「えっという間」という皮肉をかますのもアリではないか。

○○さん、えっという間に謝罪しましたね〜、なんて。

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