脳内メルヘンにとっての愛とは<前編>(やまのぼりさん #1)

自分がさも登場人物のようにその世界に存在することを想像して、空想の世界の住人になりきります。

お皿から溢れんばかりのドーナツをたいらげる気持ち。
身を犠牲にして民を守る正義感の気持ち。
反転した世界で恋人を待ち続ける気持ち。
動物が隣人の気持ち。

そうした色んな世界線の色んな人物の人生を経験し、現実の自分の糧とするのです。

自分一人が経験できる、もしくは普通の人間が経験できる、そんな経験以外の経験を空想の世界で体験して楽しむのです。

時々こうして空想の世界に逃げる込むことで、荒んだ心を癒したり、他の人の人生から学びを得たりということをこっそりやっています。

すると何でもない日常に、何か素敵なことが起こる期待をしちゃうようになります。
もしくは何でもないことが、何か重要な運命に紐付かれていると思い込むようになります。

そう、つまり、自分の人生も、どこかの空想の世界で描かれているもので、
日々過ごす時間も誰かに描かれた物語の一部だと思っているところがあるんですね。

自分が空想の世界の住人だと思いこむと、かなり毎日が楽しく過ごせます。
失敗しても、
あ~こういう展開なんだな?良いことの伏線かも。
不安なことがあっても、
大丈夫、ハッピーエンドに違いないから、今はこの気持ちも楽しもう。
辛いことがあっても、こういうシーンも物語には必要だよね。今だけ頑張ろう。

こんな感じで、ハッピー人間としての日々を送れるようになります。
よく達観してるよね、と言われるのですが(良い意味か悪い意味かはさておき)、物語を読んでいる立場で自分の現状を解釈しているからかもしれません。
とにかく空想の世界に想いを馳せる、脳内メルヘンな趣味が大好きなのです。

私を魅了し、強く引きつける、空想の世界。
愛して止まないこの世界への妄想は、今の自分の人格を形づくってくれたものでした。

せっかく連載をいただいたので、自分にとっての愛と、このおかしな趣味との関係については、後編でお話したいと思います。

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