早稲田への道のり(ふつうエッセイ #88)

早稲田大学には、何度か訪れたことがある。

東京メトロ東西線を下車し、道をいくつか斜めに横断するような形で、早稲田キャンパスに到着する。

途中で、なんでもない小道を通る。早稲田中高とマンションに挟まれた道で、「ああ、こんな道を通って早稲田に行くんだよな」と思い出す。

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僕は高校生の頃、早稲田大学の政治経済学部に行きたかった。

だが僕の通った高校では国立大学への進学を強く薦められたし、実際、早稲田大学が課している文系科目のテストはやたら難しかったので合格見込みは低かった。(そして高校の意図通り、僕は早い段階から早稲田を諦め、北海道の国立大学を志望するようになった)

なので早稲田大学とは縁がないのだが、アウトサイダーとして早稲田を訪ねると「もしかしたら早稲田に通っていたかもしれない」という、別の世界線をどうしても想像することになる。

僕が早稲田に通っていたら、もしかしたら、この小道を毎日通っていたかもしれない。

それは何だか不思議な感覚だ。

早稲田での4年間は、僕にどんな果実をもたらしただろう。きっと今とそれほど変わりはしないのだろうけど、想像するのは結構楽しい。

また、しばらくは早稲田を訪ねることはないだろう。でも、いつも早稲田を再訪するたびに感じる想いを、いつまでも忘れたくはない。

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ちなみに、今回早稲田を訪れた目的は、今年10月に開館した村上春樹ライブラリーを訪れるため。

村上さんのキャリアを実感するとともに、「図書館」という厚みの素晴らしさを体感できるので、ぜひ予約の上、来館していただきたいと思う。(ただし予約は1ヶ月先まで、ずっと埋まっています)