歌うコオロギ(ふつうエッセイ #385)

ここ数日、13匹のコオロギが我が家で歌い続けている。

虫かごは玄関に置いてあるのだが、鳴き声はリビングの扉を突き抜けて、そこそこ耳障りに響いてくる。どうしてこうなったのか。

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事の始まりは10日前。家でカマキリを飼育したのがきっかけだ。

ちょうど夏に飼っていたカブトムシが亡くなり、新しくカマキリを飼育することに。カマキリの餌が、大きめサイズのコオロギだったのだ。(夏前から飼育しているトカゲに与えているコオロギよりも、2倍くらいのサイズだ)

この3連休は雨が降るということで、事前に多めにコオロギを調達していた。しかしお別れというのは不意に訪れるもので、コオロギ調達直後、肝心のカマキリが亡くなってしまう。弱っていた様子もなかったので家族一同驚いたが、残されたコオロギにとっては僥倖といえるだろう。

ここぞとばかりに、ミーミーと歌い続けている。

朝も昼も、夜も。

僕が起きている時間帯では、彼らは全く鳴き止んでいない。なかなかの声量で歌い続けている。精が出ますねえ、なんて語りかけたいくらいだ。

コオロギの寿命は1年だそうだ。成虫になってからだと1ヶ月半とのことで、そもそも彼らが幼虫なのか成虫なのか、知識がないので見分けることができない僕である。

このまま野に放り出すわけにもいかないのだが、切り替えの早い息子は、せっせと飼育環境を整えている。

そうか、彼らも飼うのね。しばらくは、歌うコオロギとの共生が強制されそうである。