ファミリーレストランに入ると、いつもソワソワしていた。
大学生に入るまで、ほとんど僕はファミレスに足を踏み入れたことがなかった。ファミレスに限らず、幼少期は外食の機会がほとんどなかったのだ。
近所にガスト(スカイラーク)があった。18年間地元で暮らしていたが、2回くらいしか行かなかったと思う。でも、それはそれで良かったというか、全然ガストに行きたい気持ちが湧かなかった。外食好きな人は、「ファミレス=特別な場所」というように映るようだが、僕には居心地が悪い場所というイメージが強かった。今でこそ全面禁煙の店が主流になっているが、当時は分煙だったり、わりと同じ空間で喫煙するような店舗設計で、近所のガストも多分に漏れず分煙タイプのレストランだった。かろうじて訪ねた2回はもちろん禁煙エリアに行ったけれど、煙の臭いは僕の鼻をツンツンとついた。だから何というか、ファミレスってちょっと不潔な場所では?というイメージさえあったのだ。(幸運なことだと思うが、両親をはじめ、親族のほとんどが非喫煙者だった)
今も、ファミレスに入ると少しだけ緊張する。
その緊張の正体は「タバコの臭いがするんじゃないか?」というものだ。もちろんタバコの臭いなんてしないのだけど、記憶のどこかから、タバコの臭いが呼び起こされてくる。それは中学時代、野球部の監督が喫煙者で、練習を見ながらタバコを吹かしていたから、野球とはどこかタバコの臭いがするものというイメージが拭えないのと同じである。
今日のエッセイは、なんだかんだタバコの苦い記憶という感じに落ち着いてしまったが、まあタバコには色々な思い出がある。喘息を患っていたのに、吸ったことだってある。そんな苦い(色んな意味で)記憶も掘り起こし、いずれ何か文章を書いてみようと思う。