二つ目は集中。一つの物事に集中するのはとても難しい。特に現代では、常に何かとつながっている。タップ一つでSNSやYouTubeにアクセスできる。だが、集中力を高めるためには、ひとりでいることに慣れる必要がある。
ひとりでいることは難しい。不安を覚えるし、なんの価値もない、馬鹿げていると思う。だが、自分なりの信念を打ち立てるには、孤独と仲良くならなければならない。まず、孤独に慣れろとフロムはいう。
三つ目は忍耐。当たり前だが、何かを成し遂げるには待つ必要がある。一朝一夕で手に入るものはたかがしれている。
語学だって、楽器だって、スポーツだって、上級者になるためには、時間をかけなければならない。少しずつしか上手くならないことに我慢する必要があるのだ。愛する技術も、日々、愛することの積み重ねによってしか、身につけることは叶わない。
この三つに加え、フロムはそもそも愛することに対して、最大限の関心を持たなければならないという。なんとなく身につけようと思い、規律、集中、忍耐を怠っては愛を習得することはできない。それくらい、本当に愛することは難しい。
こうした心構えがあった上で、初めて愛する技術を身につけていくことができる。
では、フロムは愛することをどう定義しているのか。彼は二つの要素から成り立つという。
一つは「客観的に考える力」だ。「人間や物事をありのままに見て、その客観的なイメージを、自分の欲望と恐怖によってつくりあげたイメージと区別する能力」とフロムはいう。
この真逆にあるのが、自分にとって有益か危険かで物事を判断する「ナルシシズム」である。ナルシシズムを克服するためには、客観的に考える力が必要になる。
そして、そのためには理性が必要であり、理性を働かせるためには、謙虚さが必要だと述べる。