キルギスとモルモット、偉人でない僕(今井峻介さん #1)

8年ほど前に中央アジアのキルギスに行った。どこか遠くに行って一人になりたかったのだ。

キルギスは東側は中国(新疆ウイグル自治区)、北側はカザフスタン、西側はウズベキスタン、南側はタジキスタンに囲まれた国だ。面積は日本の半分ほどだが、人口は650万人とかなり少ない。人口の7割を占めているキルギス系民族は日本人に顔が似ていると言われている(実際にすごく似ていた)。

中国とキルギスの国境付近には天山山脈という長さ2500km(!)、標高4000-6000mの巨大な山脈がある。その山脈の北西部にイシク・クル湖という景勝地があるとガイドブックに書いてあった。特に行きたいわけではなかったけど、暇だし、他に行くところがなかったので、行ってみることにした。

写真を撮る気にならないくらい、のどかな(あるいは退屈な)風景を見ながら(あるいは寝ながら)バスに揺られて数時間。湖のほとりにあるチョルポン=アタという小さい町に着いた。

バス停で降りて、ホテルを探していたときに、近くにいた外国人の親子連れの父親らしき人(後に、祖父母と孫だということがわかる)に声をかけられた。

「こんにちは!一人旅だよね?ホテルはもう決めている?」
「まだです。ガイドブックに出てるところに行こうかと思ってて」
「あそこのホテルがおすすめだよ。僕らは今は違うところに泊まっているけど」
「ありがとうございます。じゃあ、そこに行ってみます」
「一人?」
「そうです」
「せっかくなら、晩ご飯を一緒に食べない?」
「いいんですか?ぜひお願いします」

ということで、晩ご飯を食べることになった。

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