MIKANSEI(ふつうエッセイ #549)

未完成をローマ字表記したら、思っていたイメージと違っていた。

というか「みかん星」にしか見えなくて、ちょっと困っている。

英単語アプリに「mikan」というサービスがあって、かつてヘビーユーザーだったこともあるから、未完=mikanと認識してしまったのだろう。というかそんなの、どうでもいいよね。

映画「フェイブルマンズ」で、ハリウッドの映画監督として一世を風靡したジョン・フォード。彼を演じたのはデヴィッド・リンチだったのも驚きだったのだけど、彼は終盤こんなことを言っていた。「地平線が下にある絵は面白い。地平線が上にある絵も面白い。でも、地平線が真ん中にある絵は死ぬほど退屈だ」。これはジョン・フォードの言葉なのか、デヴィッド・リンチの言葉なのか、それともスティーヴン・スピルバーグの言葉なのか。3つの複線が僕の感情をしっかりと揺らしていた。それは確かだ。

MIKANSEI=みかん星という発想は、地平線が上でも下でも真ん中でもない。

地平線がそもそもない、ただの根無し草だ。そんなエッセイを量産して、何の意味があるのだろう。未完成の人間が問う「これって何の意味があるんですか?」という言葉ほど虚しいものはないけれど、そんな感じだろうか。いや、でも「フェイブルマンズ」良かったなあ。「イニシェリン島の精霊」もじんわり響いたけれど、もう一度観たいのは、圧倒的に「フェイブルマンズ」なんだよな。