かき揚げ(ふつうエッセイ #427)

かき揚げほど、人間の心を狂わせるものはない。

……というのは言い過ぎだけど、揚げたばかりのサクサクのかき揚げの美味さといったら、比類なき存在であることは確かだ。

ひたひたに浸した油に、かき揚げのもとをつける。いきりたつジューという音は、全てを正解に様変わりさせるパワーを秘めている。作るのが面倒とか、後始末が大変とか、数多くのデメリットを全て吹き飛ばしてしまうのだ。

かき揚げは、そのまま食べても良い。ご飯にのせてかき揚げ丼にしても、温かい蕎麦にのっけてかき揚げ蕎麦にしても、何でも成立する。塩を振っても、タレをかけても、何もかけずかき揚げ本来の風味を楽しむのも良い。

かき揚げよ、ああかき揚げよ、かき揚げよ

食べた後、口の中には、かき揚げの余韻がしばらく残る。じわっと零れた旨味が、口の中でずっとダンスし続けている。すぐには歯を磨きたくない。ああ、でも昼休みが終わってしまう。そんな感じで、かき揚げの余韻に翻弄されつつも、しっかりと午後の活動に精を出す。それが、かき揚げラバーの、かき揚げ道だ。

今日もかき揚げに感謝する。そして、1日を悔いなく過ごしていくのだ。