仕事への愛と、自分に正直であることを、併存させるのは難しくて、未だに試行錯誤している(片山壮平さん #3)

「自分が良いと思うものを売っている会社に入りたいと思いました」

就活の時、面接で志望動機を問われたら必ずそう切り出した。自分が会社で価値を生み出す様子がイメージできなくて、少しでもうまく働ける確率の高い職業選択をしようとした結果だ。
当時は就職氷河期で、同期でもエントリーシートを何枚提出したかを競うような風潮がある中、私は3枚程度しか書いてない。今から考えると、本当にたまたま、その中の1枚がトントン拍子に進んだだけだった。不遜にも、若輩者の我儘を社会にぶつけ、多くの先達に苦笑いされながら、受け入れてもらった、ということだ。ありがたいと思う。
今顧みても「商材を愛せなければ幸せに働けない」と、どこかで気がついていたのだと思う。就活はお見合いみたいなもので、会社と個人が相思相愛にならなくては成立しない。私が新卒で入ったのは「公文式教室」を日本・世界に展開する公文教育研究会で、その後、結局15年ちょっとお世話になる。だがそもそもは、小1から中2まで8年間学習し、大学は4年間別の教室でスタッフのアルバイトをしていたから、歴としては入社時で既に12年ある。高校も大学も地元岡山で、就職も地元となるのが多いことを思えば、全国に転勤がある企業に入社、と言うのは突飛だが、幼なじみと付き合いだして、結婚に至った、と考えると、順当なパターンとも言えるだろう。

「『ちょうどの学習』とは、ストレッチに似ています」

公文教育研究会に入社後、保護者を対象にした入会説明会でよく使った比喩だ。実際に腕のストレッチをしてもらいながら話していた。負荷をかけないと効果はないし、負荷をかけ過ぎると怪我してしまう。痛気持ちいいくらいをキープすることで柔軟性が上がって、基礎的な運動能力が上がっていく。学習において、その『ちょうど』を追求しているのが公文式だ。

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