深夜に排水口を(ふつうエッセイ #232)

昨年1月、日立の洗濯乾燥機を購入した。

次男も生まれ、いよいよ家事で「てんてこまい」になるところ。もともと妻は「1日でも早く洗濯乾燥機がほしい」と言っていたのだが、それなりに値段が高額ということもあって踏み切れずにいた。

そんな僕に、妻が毅然とした表情で「買う」と告げたのだった。背中を押される形で「彼」が到来したわけだが、もはや僕ら家族は、彼に依存している状態だ。

寝る前にボタンひとつ押せば、洗濯物は、翌朝には乾いている。洗濯物を外に干す必要がない。洗濯物関係の家事は、思っている以上に多いものだ。

便利さにかまけて、彼には、朝と夜に稼働してもらっている。

彼が本当の人間だったら、僕らは長時間労働で訴えられてしまうだろう。

*

そんな彼が、今宵、稼働を止めた。

深夜に作業していると、ピピーと異常を知らせる音が。「C02」という見慣れない表示。

ううむ、衣服にとどまらず、スニーカーの乾燥までお願いしてしまったバチがあたったのだろうか。

結果的に排水部分にごみが溜まっていたのだった。一人暮らしは長いのだが、この部分にごみが溜まり、洗濯乾燥機が異常をきたすことはなかったのだが。ごみが溜まっていたことが原因とはいえ、なぜごみが溜まっていたのかは未だに分かってはいない。

しかし、深夜に排水口を調整するのは、何だか不思議なものだ。

無論、臭い。

できればこういった汚れとは一線を画していたいものだが、深夜で部屋が暗いこともあり(簡易ライトで手元を照らしていただけだった)、汚れが、どれくらい汚れているのかは判別つかなかった。

汚れを一通り拭き取り、もう一度、洗濯乾燥機のスイッチを押す。すると、今までの「詰まり」がなくなったのか、洗濯乾燥機がぐいんぐいんと稼働し始めた。直った!

*

しかしながら、直してから2時間ばかり経ったいまも、布団に身を委ねてはいない。

つらつら駄文を記しているのは、何だか目が冴えてしまったからだ。早く寝た方が良いことは分かっているのだけど、深夜の課題解決の余韻が続いている。

しばらくしたら、また同じように、洗濯乾燥機は稼働を止めるだろうか。次に稼働を止めるときは、やっぱり同じく深夜が良い気がする。

深夜の排水口は、とても深夜らしい趣があった。決して覗いてはいけない場所にアクセスした感覚。子どもの頃の「いたずら」と、ちょっとだけ似ているから、何だか脳内が興奮しているのかもしれない。