「笑うと、えくぼが出るんだ!」喜びを生み出す似顔絵マシーンを7年間続けている理由(イラストレーター Ricco.さん・前編)

お客さんの自然な表情を引き出すために生まれた似顔絵マシーン

似顔絵マシーンは、お客さんとRicco.さんが顔を合わせることがない。箱を挟んで描き、描かれるものだ。突飛なアイデアのように思えるが、その仕掛けはどのように生まれたのだろうか。

Ricco.さん(以下、Ricco.)「対面で似顔絵を描き始めた頃、お客さんの良い表情をなかなか引き出せなかったんです。おそらく緊張されていたんだと思いますし、私も当時は、お客さんの緊張をほぐすことができませんでした。
それでも似顔絵をお渡しすると、嬉しそうな顔をしてくれるんです。でも私は『そういう顔を描きたかったなあ』と思うことが多くて。その笑顔のまま似顔絵を描くにはどうしたら良いか考えたとき、『私が見えない状態、つまり箱のようなものに入って描くのはどうか?』というアイデアを思いついたんです」

Govoさん(以下、Govo)「最初の頃はRicco.ひとりでした。証明写真機と同じスタンスでやっていたんです。それだとなかなかお客さんが笑顔にならなかったので、僕がアテンドするような形で横に立つようになりました。
『どこから来たんですか?』『似顔絵って経験ありますか?』って聞いたり。彼女が描く時間は変わらないんですが、会話していると時間が短く感じられるようです」

「私、話術ゼロなので」と謙遜するRicco.さん。Govoさんが似顔絵マシーンの横に立つことで、お客さんの自然な表情を引き出せるのだという。

Ricco.「『この人、笑うとえくぼ出るんだ!』といった嬉しい発見が増えました。お客さんがリラックスしたときに見せる自然な表情は、似顔絵マシーンじゃないと引き出せないんです」

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普段の仕事と比べると儲けは小さい。にもかかわらず、箱に入ったままで1日150〜300人を描く重労働。そんな似顔絵マシーンの活動を7年間続けたことで、嬉しい依頼も増えたという。

Govo「似顔絵マシーンのお客さんだった方から『ウェディングパーティでも描いてくれませんか?』と呼んでもらえるようになりました。新郎新婦から、参列者の方々に似顔絵をプレゼントするような企画です」

Ricco.「年配のご夫婦が『似顔絵は初めてだね』なんて言いながら、似顔絵マシーンの前に座ってくれるんです。おじいちゃん、おばあちゃんが笑ってる瞬間って良いものです。ふたりの思い出に関われたのがすごく嬉しい。いつも幸せをたくさんもらって帰れるんです」

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