「笑うと、えくぼが出るんだ!」喜びを生み出す似顔絵マシーンを7年間続けている理由(イラストレーター Ricco.さん・前編)

絵を描いたら、誰かの喜びになる

Ricco.さんは、絵に関する特別な教育を受けてきたわけではない。どんなことがきっかけで絵を描き始めたのだろうか。

Ricco.「物心ついたときから、何かを描いたり作ったりしていました。かまぼこの板の上に、紙粘土で作った小さなだるまを並べて作品にしたり。それを近所に配っていました。いまでも『まだ手元にあるよ』と言ってくださる方もいます」

Govo「彼女を近くで見ていると『ものを作ること』『誰かに喜んでもらうこと』がセットになっていると感じます。似顔絵マシーンも、似顔絵を渡したときのお客さんの顔が、絵を描く原動力になっているようです。『あのお客さんの笑顔良かったね』なんて会話をよくしています」

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ものづくりへの情熱が失われないまま、Ricco.さんは美術大学に入学する。様々な方法のものづくりに取り組むデザイン課では、映像編集を手掛け、自らのイラストを動画にした作品作りも行なったそうだ。そんな中、転機は不意に訪れる。

Ricco.「大学4年生のとき、アルバイト帰りに不思議な建物を見つけたんです。スタジオジブリの『ハウルの動く城』に出てくるような建物で。
しばらく眺めていたら大家さんが出てきました。『気に入ったのなら店でもやってみるかい?』って誘われて、『やります!』と即答しました。ギャラリー兼カフェのような形で、私の絵を飾りつつ、お客さんが来たらコーヒーやお酒を出していました。2年間くらい続けていましたね」

この場所で、Ricco.さんはGovoさんと出会う。Govoさんは作品の多彩さに驚いたという。

Govo「当時関わっていた演劇で、僕は小道具を作っていました。制作に関する仕事を、年1回ほどRicco.にオーダーしていたんです。
最初は、知人が店のことを教えてくれました。初めてRicco.の絵を見たとき『ああ、この人の絵すごく好きだな、絶対に仲良くなりたいな』と直感的に思い、声を掛けたんです。いまはガーリー系だったり、ファンシーな作品が多いですが、Ricco.はシュールでダークなものも描けるんです。僕が一番惹かれたのは、『鼻の下から電車が出てくるおじさん』の絵でした」

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