【だいきらいで、だいきらいで、もしかしたらほんの少し好きかもしれない】ふるさと・東北(小波季世さん #4)

3月は、特別で複雑な季節だ。年度の変わり目、そして2011年の東日本大震災。

3月の連載をわたしが持つことになった理由も、わたしの出身が東北であることが大きい。

2022年3月16日23時36分頃。福島県沖を震源とする震度6強の地震が発生した。津波注意報が発令されたほか、東北新幹線が脱線するほどだった。被害に遭われた皆さまに、物心両面での安らぎが一日も早く訪れることを願ってやまない。

今回の記事は読む方によっては、胸が苦しくなる記憶を思い出させてしまうかもしれない。そんな方はここでそっと記事を閉じていただいてかまわない。そして、いつかもし読みたいと感じる時があれば読んでいただけたらとてもうれしい。

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「東北出身であること」が呪いになった瞬間

いろんな人に言われることがある。

「小波さんって東北愛があるよね」
「季世は本当に地元想いだよね」

そう言われるたび、わたしは素直にうなずくことができない。東北を離れて10年近く経っても、東北を過度に意識しているのは確かだ。だけど、それがピュアな「愛」、純粋な「好き」かと言われると断じて違う。

これを言うのは勇気がいる。でも正直に言おうと思う。……わたしは東北がだいっきらいだ。時には存在を忘れてしまいたいくらいに。正確には「東北」に縛られている自分がだいっきらいだ。だいっきらい、だった。

「あなたがあの会社に内定をもらえたのは、あなたが被災地出身だからよ。でなきゃあなたがあそこに内定をもらえるわけがない」

もう10年くらい前に言われた言葉なのに、今でもはっきりと思い出せる。それを言った人の前置きの言葉も、口調も、声のトーンも、すベてがドラマのワンシーンのように蘇る。大学時代、やっとのことで就活を終え、内定先の報告をした社会人の方に言われたその言葉は、ずっとわたしの心のどこかに突き刺さっていた。

思い出すたびに「違う、そんなことない」と思いつつも、どこかでその通りかもしれないとも感じてしまってずっと怖かった。今でもとても尊敬している、地位も名誉もある方から言われた言葉だったから余計に。

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