ユーミン 愛の文法!(松金里佳さん #3)

人と比べられないものがある

では、こんな気持ちは誰が連れてきたのでしょう?
その答えはインターネットとSNSだと思います。
こう書くと「SNSはけしからん」という論調に等しく聞こえてしまうと思いますが、前提としてわたしはそうは思いません。むしろ、負の側面が強調されてしまいがちなインターネットやSNSの力をわたしは信じていたいと思っています。数多の情報へ誰しもがアクセスできるようになったことは、暮らしに豊かさをもたらしていると思うからです。

一方で、「情弱」という言葉に称されるように、情報を得ていないと「損をする」という感覚が芽生え、わたしたちは「得する情報」や「正解」がどこかに必ずあるという前提でいつもそれを探してしまうようになりました。そして、SNSが登場したことで、投稿だけを切り取って他の人とじぶんを比べてしまい、不安や劣等感がつきまとうようになりました。そうして、「正しいものを選びたい」「無駄なことをして損をしたくない」といった気持ちが強くなり、「だって、好きだから」という気持ちが蔑ろにされてしまっているのだと考えます。

そんな時、忘れてはいけないのは、本来、人と比べられないものがあるということだと思います。

お仕事や人間関係における幸福は、長期的な時間軸のなかでじぶんのなかに象られていくものです。それを、ある瞬間だけを切り取り、生活環境も価値観も異なる他の人と比べて、その良し悪しを判断することは到底できません。
だからこそ、どんなに頭が良い人の言葉より、正式な情報機関より、じぶんの内にある思いこそ、信じるに値するものだったりする。その瞬間は必ずあります。

もちろん実体のない「正解」がいつも悪さをするわけではありません。しかし、いま脅かされてる「だって、好きだから」の余地は、もっと残されていていいはずです。

「だって、好きだから!」

しかし、そう書くわたしも、今日のランチだって食べたいものよりも糖質の数字に踊らされてしまいました。わたし自身も「間違えたくない」思考に流されて、いつの間にか囚われてしまったひとりなのだと、日々感じる瞬間が多々あります。

でも、そばにいてくれている人たちの顔を思い返すと、そこにあるのはまっすぐな気持ちです。そして、周りのみんなも同じ気持ちを持って一緒に過ごしてくれていると感じます。

先日のドライブも、わたしたち3人の会話は、お互いに「何を言ってるのかまったくわからないなぁ」の瞬間で溢れていました。でも、楽しくておもしろくて、居心地が良いから一緒に過ごしたい。
「なんでそこは仲良いの?」という問いに答えるならば、「だって、この2人が好きだから」以外、ありません。それはとても幸せなことなんだと改めて思います。

こんなにうれしくて誇らしい気持ちにさせてくれたユーミン。やっぱり偉大だなぁとしみじみ思うドライブでした。

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