漫画版『風の谷のナウシカ』が問うこと(松金里佳さん #4)

最後のエッセイとなった今回は、『風の谷のナウシカ』について書きたいと思います。映画はみなさんご存知かと思いますが、その映画には原作となる漫画が存在します。

漫画は全部で7巻あり、映画が描く世界は2巻の途中までです。調べてみたところ、漫画の連載は1982年にはじまり、完結したのは1994年。映画の公開は1984年なので、当然映画が製作されたときには、物語はまだ序盤でした。漫画が完結するのは映画が公開されてから、なんと10年後。そのため映画には当然描かれていないその後の結末が漫画では明らかになっています。今回は、その漫画版のナウシカを手引きにしたいと思います。(この先に結末が書かれているため、漫画版を読まれてない方は、お気をつけください・・・!)

漫画版ナウシカのあらすじ

映画にも出てきた腐海。そもそもなぜ腐海が生まれたのか。その理由が漫画では明かされています。それは「世界の浄化」です。

1000年前に暮らしていた旧人類は、高度な文明を手にしていた一方、絶え間ない戦争を繰り返し、世界をひどく汚染させました。そこに広がっていたのは、もう生命が住めないほどに荒れ果てた世界です。そこで、汚染された世界のすべてを破壊し、浄化し、ゼロから平和な世界を作り直す計画を立てたのです。そのシステムが腐海でした。

映画のナウシカを見たとき、そこに描かれている腐海や蟲の姿を「人間にはコントロールできないもの」としてわたしは捉えていました。しかし、宮崎駿監督が漫画版で意図していたのはむしろその逆で、腐海すらも人間がしぶん達のために生み出したシステムとして登場させています。

そして、浄化された後の世界で、人類が復活するため、旧人類は「墓所」と呼ばれる場所で旧世界の文明や生物を保管することにします。しかし、かつてのままの旧人類が復活すれば、また無残な戦争を繰り返し、再び世界を汚しかねません。それを防ぐため、旧人類は遺伝子操作をし、戦争をしない新人類を生み出し、墓所に保管しました。地球がすべて浄化されたのち、彼らは目覚め、かつて絶滅に瀕した生物や科学文明とともに復活し、平和的な世界を再建するという計画が練られていたのです。

この計画を知ったナウシカは墓所を破壊することを選択します。それは、この先の地球に生命が生き残る道を完全に絶つ行為でした。

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