悪夢はたいてい(ふつうエッセイ #450)

悪夢には2種類ある。

現実的な悪夢か、非現実な悪夢か。

子どもの頃に見る悪夢は、だいたい非現実なものだ。何かに追われていたり、モンスターが現れたり。「どうしてこんなに理不尽な状態に立たされないといけないのか?」といった焦燥、自分が傷ついたり殺されそうになったりする直前に目が覚める。

小学校高学年〜中学生くらいになると「あ、自分は夢を見ているんだな」と気付いてくる。なので非現実な悪夢の中でも、多少は冷静になれる。「おれはいつだって現実に戻れるんだぞ」と。(実際にそうして悪夢から目覚めることもしてきた)

大人になってから見る悪夢は、少し現実的な様相を呈してくる。

結婚し、子どもが生まれてからは、家族が事件や事故に巻き込まれる悪夢を見るようになった。日々そういった報道に触れ、辛い気持ちが無意識を占有しているのかもしれない。

家族が巻き込まれる悪夢は、あまりにリアルだ。「おれはいつだって現実に戻れるんだぞ」という感覚を持てずに、悪夢で飛び起きてしまう。

悪夢の側も、「そう簡単には目を覚まさせないぞ」と技巧を凝らしてくるのだろうか。だとしたら、悪夢とは、なかなか意地の悪いやつだ。

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今朝見ていた悪夢は、それなりに現実的なものだった。

知り合いのいる会社で採用面接を受ける。最終面接に、なんと「よく知る」人が面接官として登場してきたのだ。さぞ和やかに進むと思いきや、同席していた他の人たちの不興を買い、散々な結果に終わってしまう。

テーマは新鮮なれど、「あるある」の悪夢ではある。しかし今朝、いつもと違ったのは、目覚めたきっかけがiPhoneのアラームだったということ。

悪夢はたいてい、自分で「うわーーー!!!」となって起きるものだ。心臓がバクバクして「ああ、夢で良かった」と自分を宥めて、再び眠りにつく。興奮して眠りにつけないケースもあるが、僕の場合、だいたいは入眠に至れる。

アラーム音で悪夢から目覚めると、すごく微妙な気分になる。

あ、起きる時間なんだな。と冷静に考えつつも、悪夢が脳裏にこびりついたような感じで、少々居心地が悪い。居心地の悪さを解消しようと入眠を試みると、それはそれで「二度寝」ということになる。

だから諦めて、このエッセイを書いている。

夢とは、だいたい記憶からすぐに消えるのだけど、今朝の夢は、ちゃんと登場人物まで憶えている。該当の人物にLINEでもしようか。

いや、やめておこう。

大して、仲の良い人たちではなかったから。