近況と雑感(ふつうエッセイ #256)

くるりというロックバンドが好きです。

もはや「くるりというロックバンド」なんて説明が不要なほど、日本でもポピュラーな存在になっていると思うけれど、いちおう「くるりというロックバンド」というふうに書きました。いちおう。

そんなくるりというロックバンド、noteというメディアプラットフォームでテキストを定期的に更新しています。いつしかタイトルは「近況と雑感」で統一されるようになりました。

これは読み手にとっては困りもの。「あのときのnote、いつの『近況と雑感』に書いてあったっけ?」と探すのにひと苦労だからです。知らず知らず、僕たちは件名やタイトルを記憶のフックにしています。またGoogleなどの検索では、本文に書かれているよりもタイトルにある言葉(キーワード)を優先する傾向があるといいます。

当然、くるりというロックバンドは、それを意図的にやっています。

意図があるというか、「意図がないということを意図している」という言い方が正しいかもしれない。

探しづらいけれど、それで困ることって些細なことじゃないか。

本棚は探しづらい。いちいち整理していないから「あの本、どこにあったっけ?」とひと苦労だ。その分、Kindleのような電子書籍だったら、何もかも一発で探し当てることができる。

でも本棚の場合、目当ての本は見つからなくとも、本棚を見渡しているうちに、「あ、この本読みたいと思ってたんだ!」という出会いになったりする。パラパラとページをめくっていると、時間があっという間に過ぎてしまう。でも、そんな時間は豊かなものだ。

それは自前の本棚に限らず、本屋やCDショップにも同じことが言えるかもしれない。加えて本屋やCDショップには、そこで働く人たちによる「編集」という妙味もある。

アナログが何もかも素晴らしいとはいわないけれど、近況と雑感を読むと、そんなのんびりとした時代を思い出してしまうのだ。