総額表示義務(ふつうエッセイ #641)

2022年4月から、総額表示義務が施行された。

総支払額を分かりやすく示すため、消費税額を含んだ支払総額の表示を義務づけるというものだ。当時は書籍など、古くから「もの」として売られているものはどうするんだ?という議論がなされていたけれど、だいたいにおいて便利になったように思う。最近だとキャッシュレス決済が当たり前になったけれど、いや、なったからこそ、現金をギリギリしか持ち歩かない僕は、10円単位で足りるかどうかを判断しているような気がする。消費税の計算を頭でしながら買い物をしていたときのヒヤヒヤ感といったら。

でも、ときどき総額表示義務を果たしていない事業者も見られる。

事業者と書いたけれど、まあ、その辺にある定食屋さんだったりするのだが、たぶんその辺りの情報に疎いのだろう。誰も指摘しないのか、指摘されても無視しているのか分からないけれど、時々ルール無視というトラップに引っかかって、消費者である僕自身が痛い目に遭うことがある。

例えば、こんな感じ。

800円の定食を頼んだ。リーズナブルな肉野菜炒めである。なかなか美味しくて満足していたのに、会計時に「880円です」と言われる。

いや、まあ880円だって良いさ。それくらいの価値はあったと思う。でも、定食において800円と880円は大きな違いがある。サラリーマン(僕はサラリーマンじゃないけれど)の、ランチにおける会計感覚を侮ってはいけない。この店の定食が880円だったと事前に分かっていれば、少し先の定食屋に行っていたかもしれない。少し先の定食屋は律儀に総額表示義務を遵守している。ルールを守っている定食屋が、ルールを守っていない定食屋のせいで機会損失してしまった。そんなバカな話があるだろうか?

コロナ禍でも、自粛要請という申し出を守らない事業者が議論された。一概に良し悪しを論じることはできないが、事実としてルールを守っている事業者が割を食っていた。(事業規模にもよるが)

誰が良いのか悪いのか、そんなことを議論したいわけではない。でも、ちょっと工夫すればフェアにできるような状況に、誰もが見て見ぬフリをしていることはないか。分かりやすく戦えないものかと思案するのも、無駄な気がしてつらい。