はじめての失恋と、いちばんの失恋(三好優実さん #2)

その日も、いつもの恋愛のはじまり方だった。お酒に酔ってひとまわり年上の男を家に連れ込んだ。その後の記憶はない。そういうことがあったので、その日から彼のことを好きだという設定にした。

好きだ好きだと寄っていくので、相手も気にかけてくれるようになった。何度も会い、何度も飲み、何度も家に来た。彼には何年も付き合っている彼女がいたけど、気にならなかった。

何がきっかけだったのかは思い出せない。いつのまにか私は、彼のことが四六時中頭から離れなくなっていた。そんなことははじめてだった。あんなに浮き沈みを求めていたのに、いざひとりの男に夢中になると、毎日毎日ありえないほど苦しかった。彼の一言に人生のすべてが左右されてしまう。気が狂いそうだった。彼以外との人間関係が一切どうでもよくなった。

大好きになってからは、気にならなかったはずの彼女の存在が、とても気になるようになった。気になるどころではない。きっと私より美人で、明るくて楽しくて賢くて、素敵な人。想像ばかりが膨らんで、いつのまにか空想上の完璧な女がいつも私を苦しめた。

好きという気持ちが膨らむほどに、彼に対してひたすらに受け身になった。すべての決定権を委ねることが愛だと思っていたし、それしか思いつかなかった。なにをすれば喜んでもらえて、なにをすれば1番になれるのかが分からない。1番になったところで繋ぎとめる自信もなかった。今思えば、都合のいい存在でいることが当時の私にとってゴールだった。

1 2 3