待ち人はいない(ふつうエッセイ #554)

図書館で、「うっかり延滞してしまう」というミスを頻繁にやってしまう。

新作でない本の場合、次に予約が入っているケースはほとんどない。遅読の僕は、2週間の期限間近に、追加で2週間の期限延長するのが常である。図書館のレギュレーションに甘えつつ、約1ヶ月で本を読了するという算段である。

だけど、期限間近の期限延長を失念してしまうと、それは延滞に早変わりする。延滞した本は、次に予約が入っていなくても、ウェブサイト上で延長することができない。図書館に行き、もう一度借り直す必要があるのだ。

そんな「うっかり」を、僕はこれまで何回も、何十回も、いや何百回も繰り返している。

繰り返すが、次に予約が入っていることはほとんどない。誰にも待たれていない本……というのは語弊があるけれど、自分のミスゆえに待ち人がいない状態で本を返却しなければならないという状況は、何だか本にとっても失礼な気がしてしまう。

それもまたルールであることは間違いないのだけど、この状況はあまりに切ない。これって何かのメタファーみたいだなと思うけど、何も思いつかない。

そんな本日、映画「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」がアカデミー賞作品賞を受賞した。通称エブエブ。メタファーの宝庫である。インスパイアされて、僕にもメタファーが思いつくほど、メタファー界は甘くない。なんか、ありそうなんだけどね。